難治性過活動膀胱に対するボトックス膀胱壁内注入療法について

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難治性過活動膀胱に対するボトックス療法(ボツリヌス毒素膀胱内注入療法)について

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難治性過活動膀胱に対するボトックス膀胱壁内注入療法について

難治性過活動膀胱に対するボトックス療法(ボツリヌス毒素膀胱内注入療法)について

過活動膀胱とは

過活動膀胱は、尿意切迫感が強く、頻尿・夜間頻尿を伴う病気です。

本邦での過活動膀胱の有病率は 40 歳以上で 12.4%(男性 14.3%、女性 10.8%)とされ、性別を問わず加齢に伴い有病率が増加します。治療は通常、行動療法と薬物療法を行いますが、治療を少なくとも12週間継続しても治療効果がでず、切迫性尿失禁などで著しく生活の質(QOL)を損なう場合を「難治性過活動膀胱」と定義します。2020年4月より日本でも保険収載されたボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法(ボトックス®膀胱壁内注入療法)を当院では院長が実施資格を得て開始しています。

 

 ボトックス療法とは

副交感神経末端からのアセチルコリン放出を阻害して、膀胱の異常な収縮を抑制します。

膀胱鏡という観察器具を尿道から膀胱内に挿入して、膀胱の筋肉内 20 箇所に薬液(ボトックス)を注射します。

 

 ボトックス療法の適応となる方

現在の治療では症状の改善効果が不十分、または治療(内服薬など)の副作用が気になる方(難治性過活動膀胱)が対象です。

ボトックス治療を行うにあたっては、残尿量が 100ml 以下であることが必要です。また、万が一尿が自力で出せなくなった時のために、自分(もしくは生活を共にされる方)で導尿ができることが必要です。

 

 ボトックスの特徴

ボトックス療法は日帰りで受けられます。副作用として、残尿量の増加、尿閉、尿路感染症がおこることがあります。1 回のボトックス療法には効果の持続期間があり、約 8 カ月とされています。それ以降経過すると効果が弱まっていきますので、1 年に 2 回程度のボトックス注射を行うと効果が維持されることになります。ごくまれに、繰り返し注射を行っていくと中和抗体が産生されて効果を得にくくなることがあります。その他の注意事項として、女性は投与後 2 回目の月経を経るまで、男性は投与後 3 カ月以上経過するまで避妊が必要になります。

 

 ボトックス療法の流れ

1 前検査、治療の説明と同意

事前に採血、尿検査や残尿量の測定など必要な検査を行います。検査で適応と判断されれば、ボトックス療法についての説明を行い、治療同意書の記入をします。

2  治療当日

尿道から管を通して膀胱の局所麻酔を行います。15 分ほど休んだのち、内視鏡を膀胱内に挿入します。細い注射針を用いて、膀胱の筋肉内にボトックス注射液を約 20 か所に注入します。注射は 10 分〜15 分程で終了します。注射終了後は休憩室で 30 分〜1 時間程経過観察します。この間に、血尿の程度や排尿状況を確認し、問題なければ帰宅します。

3  治療後の診察

注射から 1〜2 週間後に外来診察で残尿測定などを行います。問題がなければその後は 1〜3 ヶ月毎に患者さん希望のペースで受診し、経過観察します。

 

治療効果

日本での臨床試験結果では、尿失禁の減少回数は平均 3.24 回、完全に尿失禁がなくなった方の割合は約 20%、以前の回数から半分に減少した方の割合は約 60%でした。また、尿意切迫感の減少回数は、6 週目で平均 3.32 回でした。排尿回数は、6週目に 1.78 回減少しており、難治性過活動膀胱のかたに有効性が期待できる治療法と示されています。

 

副作用

排尿困難、尿路感染症、尿閉が起こることがあります。国内臨床試験では、排尿困難の発生

率は 9%、尿路感染と尿閉は 5%でした。また、注射後には一時的に血尿が見られます。

 

まとめ

ボトックス療法は、難治性過活動膀胱の患者さんに症状緩和が期待できる有用な治療法です。過活動膀胱は、尿意切迫感、頻尿、切迫性尿失禁のような生活の質(QOL)に影響する症状を生じますが、医師に相談しにくく我慢して思い悩む方も多いです。現在では、行動療法や薬物療法だけでなく、多様な治療手段があります。どんな悩みでも、まずは気軽に医師にご相談ください。